パパたちの「ライフシフト」インタビュー

育休をパパも取れると知ったのが転機。子育ての楽しさを広げたい   池田浩久さん

 

池田浩久さん

 

パパライフサポート代表

港南区子育て連絡会副代表

 

プロフィール

1977年生。北九州出身。横浜市在住。4児の父。1999年に通信建設会社に新卒入社。2012年夫婦共働きで子育てしながら、神奈川県内・横浜市を中心に『父親育児の楽しさを広める』活動を開始。絵本の読み聞かせや子ども達のふれあい遊びなど講座を実施した回数はこれまでに100回を超える。2016年に子育て支援のNPOに転職。2019年パパライフサポート事業で開業・独立。第1子から第3子まで一度ずつ育休を取得し産後のパートナーを支えながら家事・育児にコミットする。また、神奈川県男女共同参画審議会委員・横浜市子ども子育て会議委員を務める。神奈川県・横浜市青少年指導員。小学校のおやじの会等多数の団体に所属して地域の子育てに積極的に関わる。


キャリアを積むほど早く帰れない。子どもが保育園で夕食を…

 

お子さんは4人ですよね?

はい。10歳、7歳、5歳の3人の女の子と、3歳の男の子がいます。

 

そもそもは会社員だったんですよね

通信建設業界でシステムエンジニア(SE)をやっていました。氷河期世代でもSEバブルがあって、夫婦ともにSEでした。私はすごく忙しくて帰りも遅い仕事。妻は時短勤務だったにもかかわらず、早く帰ることができず。でも時短じゃなかったら、もっと帰りが遅くなるというような仕事です。長女が2歳頃、保育園で夕飯を食べてから、お迎えに行くことが当たり前のような生活になっていました。

 

夫婦ともに遅く帰る生活だったんですね

「このままでいいのか」って思っていたんです。キャリアを積めば積むほど、仕事が増え、早く帰ることができないんですよ。現場で働くSEということもあり、平日残業なのに、土日の仕事も多く、連休や年末年始の仕事もあり、それこそ、何度も何度も夫婦でたくさん話し合いました。

 

ママの仕事復帰のタイミングで1カ月の育休を取得

 

育休はいつ取ったんですか?

「改正育児介護休業法」の報道を見たんです。そもそも男性が育休を取れるということ自体を知りませんでした。「なんだ、パパでも育休が取れるんだ!」って衝撃的でしたね。

その頃は会社でリーダー的な立場だったんですが、育休取得の半年前くらいから会社に相談して、長女が1歳の時に1カ月の育休を取得しました(※)。2011年の時です。

 

お子さんが1歳というタイミングで育休を取ったのはなぜですか?

仕事的に年度末の3月が山場なので、そこを過ぎてから取る方が調整しやすかったということはあります。あとは、4月に長女が入園し、ママが育休から復帰するタイミングだったので、復帰の準備などもあり、ちょうどよかったですね。

 

FJの活動を知ったのはいつ頃ですか?

育休は取得したものの復職後、結局帰りが遅い生活が続きました。そんな中、FJの活動に出会いました。2013年には第2子が生まれました。産褥期に育休取得しましたが、仕事は営業に変わり、ワークライフバランスを目指しつつも、飲み会の付き合いや、ゴルフの誘いもあり、多忙な生活が続きました。

 

その後、会社を辞められたんですよね

2014年に「おとうさんといっしょ」という番組に親子で出演したのですが、そのころから転職を意識するようになりました。子どもを保育園に迎えに行くこともありましたが、遅い時間になってしまうこともしばしば。そんな生活をしながら「今の状況はおかしい」と思ったんです。最初の育休を取ってから5年後の2016年に、16年間勤めた会社を辞めました。

そして、子育て支援拠点の活動をしているNPOの正規スタッフとして雇用して頂き3年半ほど子育て支援について学び経験しました。

 

今はどんなお仕事をしているのですか?

今は、「パパライフサポート」という個人事業を立ち上げて、父親育児支援活動を行っています。

 

会社を辞めることに、ママから反対はありませんでしたか?

ママも応援してくれています。夫婦で育児と仕事のバランスを考えたとき、子どもとの時間をもっと大切にしたいと思ったんですね。職場は徒歩30分くらいの場所です。今までできなかった、夕飯だけでなく朝ご飯も子どもと一緒に食べられることや、夫婦で家事・育児をだいたい半分くらいずつシェアできていると思いますし、子どもが急に病気になったときには、自分が迎えに行き、小児科に連れていきます。子どもの身長や体重もきちんと把握しています(笑)。

 

パパ講師を増やして、子育ての楽しさを伝えたい

 

現在の活動について、もう少し詳しく教えてください

活動を始めたのは2014年から。副業的にパパ講座の講師を引き受けたりしていました。父親が子育てすることに社会の認知度やインフラがなく、子どもと二人でお出かけしても、オムツの交換にも困ることが多い。そんな育児経験をパパ講座の中で伝えると、同じように多くの父親が子育ての悩みを抱えていました。父親育児支援がもっとたくさん必要だと感じたこと、そして、その活動がとても楽しかったことが大きく、2016年に会社を辞め、現在は、子育て支援活動・父親支援の活動を中心に行っています。神奈川県・横浜市内を中心にパパ講座の講師、パパ講師養成事業、子ども達の体験活動を増やすイベント企画などを行っています。

 

会社員のときから、パパ支援の活動を行っていたのですね

育休を取った後に、横浜市パパスクールに参加しました。FJ理事の東さんが窓口だったんですが、「育休を1カ月取った自分は、結構すごいんじゃないか」と思って参加したら、専業主夫とか、もっとすごい人がいっぱいいました(笑)。講師の話もためになるし、面白くて刺激的でしたね。

 

今の活動は?

2018年に児童虐待のニュースが相次ぎ、2019年に横浜でパパ中心とした児童虐待勉強会を開催しました。FJ理事でもあり児童虐待防止の活動をしている高祖さんに講師を務めていただきました。そのタイミングでもっと活動に専念したいと思い「パパライフサポート」を立ち上げ、父親育児支援業で起業しました。

 

今後していきたいことは何ですか?

児童虐待をテーマにした父親育児支援事業を展開していきたいと思っています。

そして、今だからこそ、子ども達の体験活動を増やしたいと思い2020年11月にはパパサークル「パパレオンズ」で父子デイキャンプを行いました。他にも「少子化社会で親ができること」ということでトークイベントを行ったり。育児に積極的でないパパたちや、結婚や子育てに悲観的・消極的だったりする学生にも「子育ては楽しい」という情報発信もしていきたいです。学生向けには実際のアンケートでもその手ごたえを感じています。そんな世の中になっていけば、きっと児童虐待もなくなると思っています。

子育てすることで親自身にも気づきがありますよね。いろいろな生き方や家族のあり方ななど、もっと自由さが社会にあっていいと思っています。子どものために時間を使うことだって、当たり前になるといいですね。

 

※「パパ・ママ育休プラス」厚生労働省

両親がともに育児休業を取得する場合、原則子が1歳までの休業可能期間が、子が1歳2カ月に達するまで(2カ月分はパパ(ママ)のプラス分)に延長されます。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000169713.pdf

 

 

取材・文/高祖常子(FJ理事、子育てアドバイザー)