パパ達の「ライフシフト」インタビュー                   「やりたいことをやる」ために、会社員からFPに転職 内木場豊さん

 

内木場 豊さん

 

ウチコバンク代表

NPO法人ファザーリング・ジャパン理事

NPO法人ファザーリング・ジャパン九州副代表理事

プロフィール

大学卒業後アメリカへ留学。インターンとして現地証券会社で働く。帰国後は証券や不動産会社などで働くが、お客様、一人ひとりと関わる中で、「ライフプラン、マネープラン」の提案により得られる「お客様とその家族の笑顔」こそ自身の人生のミッションと気づき、ファイナンシャル・プランナーとして平成22年独立起業。プライベートでは3児のパパであり、NPO法人ファザーリング・ジャパンの理事も務める。「マネーライフバランス」と「ワークライフバランス」を自身も日々実践し、家族、お客様や地域を笑顔にすることで、仕事に、プライベートに楽しく充実した毎日を送る。


難病を経験し、「やりたいことをやる」という意識を持つように

 

 

安藤 まず、最初に内木場さんご自身のストーリーを教えてもらえますか?

 

内木場 幼いころに難病がわかりました。ハーモニカを吹いたり、風船を膨らませたりすると力が抜けてしまう、一過性の脳梗塞の症状でした。その後、3回くらい頭を開いて手術しました。最後に手術して退院するとき、「こういう動きはいいけれど、激しい運動はしてはいけない」など医者からいろいろ言われました。原因もよくわからなかったので、「できるときに、やりやいことをやったらいい」というのが親と私の考え方でした。包帯が取れたら大好きな野球をはじめ、父が相手になってくれることもありました。そんな体験が、自分の生き方のベースになっているのかもしれません。

大学は国際文化を専攻。3歳上の姉が洋楽を聞いていたのでそこから英語にはまり、留学もしました。やりたいことをやってきましたね。

 

安藤 「やりたいことをやる」というのが、生き方のベースですね!

 

内木場 そのために「どうやったらできるのか」というのが、考え方のマインド。アメリカ留学中にインターンも経験し、帰国後、証券会社に就職し、何度か転職をしました。結婚した時に働いていた会社では英語も活かせていましたが、子どもが生まれたら育休が取れるという感じもありませんでした。ちょうどそのころに子会社を整理する統廃合のための人員整理がありました。第1子が生まれる1か月前のことです。 

このころのことを妻に聞くと、2週間くらいうなされていたらしいです(苦笑)。もともと独立したいと思っていましたし、子どもが生まれる前にFP(ファイナンシャルプランナー)の資格も取っていました。資格講座を受けたときの講師が僕の師匠ですが、その人も独立開業していた人。会社を辞めて、開業準備に半年くらいかかりましたから、逆にその期間は夫婦二人で子育てしました。仕事を辞めてから開業までの間は、退職金や失業手当をもらってしのぎました。

 

安藤 お子さんは3人ですよね?

 

内木場 3人の子どもたちは3歳違い。妻は結婚するときに仕事を辞めたのですが、大学医学部で実験補助をしたり、山小屋でアルバイトしたり、土地家屋調査士事務所で働くなど、好奇心旺盛で多彩な人。妊娠中は仕事から離れている期間もありましたが、どの子も1歳前後になるころには、仕事に復帰しました。

 

安藤 子ども3人ということで、収入面などの不安はありませんでしたか?

 

内木場 FPの仕事とFJQ(NPO法人ファザーリング・ジャパン九州)の仕事が忙しく、収入にも結び付いていました。それに独立前に蓄えもありました。FPになっても最初は収入は見込めませんから、やめる前から会社の人の相談に乗ったり、FPの師匠にFPの仕事や独立のための一連の流れを見せていただいたりしました。

 

地域活動は、子育てやママとのバランスを取りながら

 

安藤 子育てにはかなりコミットすることができているんですか?

 

内木場 FJQには取材依頼もたくさんあり、インタビューを受けると妻も第1子のときには「一緒に子育てできて助かっています」と言ってくれていたんです。でも、2人目のときには「今はそんな風に言えない」と言われて。ちょっとまずいと思いましたね。夫婦でいろいろ話し合いました。FJQの事務局の仕事が忙しかったのですが、それを新しいメンバーに回したりもしましたね。 

子育ての時間は必要なので、できるだけやるようにしていました。それにイクメンの流行?も少しずつ落ち着いてきたので、それに伴ってFJQの仕事もちょっと落ち着いた感じもあります。

 

安藤 地域活動もやっているんでしたっけ?

 

内木場 長男の小学校でPTAをやっています。2年目で会長になりました。PTA会長になると、付随して出席しなければならない地域活動が増えるんですよ。地域の会議などにも出なくちゃいけなかったり。PTAも少しずつ変えていきたいけれど、家の時間も大事にしたいと思っています。下の子は今3歳なので、今しかない娘との時間を楽しみたいですし。上の子も数年すれば離れていってしまうでしょうから、上の2人との時間も貴重ですね。

PTA主催のお祭りで、カブトムシの幼虫を販売するためにカップに入れているところ。

 

安藤 会合が増えると家にいる時間が減りますよね。ママの理解はいかがですか?

 

内木場 子どものことなので、そこは今のところ大丈夫です。

 

安藤 ママは仕事しているんですか?

 

内木場 ママは今、デイサービスの仕事をしています。ママの気持ちを意識していないと、仕事と子育てでイラっとする時間って増えてしまうこともあると思うんです。うちのママは飲み会にほとんど行かないんですが、行くときには快く送り出します。朝ごはんと子どもの送り迎えは自分がやってます。

学童の餅つき大会での写真です。真ん中が内木場さん。

キャリアチェンジのときは、数年間の収支も想定して

安藤 内木場さんのライフシフトのタイミングはいつでしたか?

 

内木場 大学で留学したときですね。親が「1年分の予算をあげるから、自分でやりなさい」と言ってくれたんです。自己責任ですが、アメリカの何でもありという文化に影響を受けていますね。その考え方が、今につながっていると思います。 

アメリカで学んだ金融関係の仕事を日本ですることにしたわけですが、証券会社で働き始めると、「自分じゃなくてもできる仕事だな」と思ってしまいました。そこで、FP(ファイナンシャルプランナー)の仕事をしたいと思うようになりました。クライアントのためにプランを立て、喜んでもらえる、お互いにハッピーな仕事です。

 

安藤 収入や人生設計的には、どんな感じですか?

 

内木場 独立するタイミングで、FPの師匠にわが家の家計について見てもらったんですよ。妻もパートする前提で、夫婦で最低限いくら稼いだらいいのかと。人生設計も家計のことも、生きていくプランを考えておくのはとても大切だと思っています。私の場合は独立してすぐは収入があがらないことを想定していましたが、3年後には軌道に乗せるというプランで臨みました。人生を楽しみつつも、守るべきところは守ることが大事だと思っています。

 

安藤 バクチはしないタイプですね?

 

内木場 リスクは取るけど、守るところも大事にします。事業をしていますから普段からそういう考え方でやっていますね。あとは、株主優待で、写真が無料で撮れるとか、そんな技も活用していますよ(笑)。

 

安藤 子どもへの金銭教育はどのようにしていますか?

 

内木場 「お金持ちじゃなく、幸せ持ちに」が合言葉です。子ども3人に貯金箱を渡していますが、お小遣いをもらったら、貯金箱に入れるようになっています。貯金箱には4つの穴があり、「貯める」「使う」「投資」「寄付」と分かれています。それぞれに入れる割合は、子ども自身が決めます。寄付に集まったお金は、年1回家族で相談してどこに寄付するかを決めています。

 

4つに分けて貯められる貯金箱。利用することで、お金の使い方や寄付についても学べる。

ライフシフトのマネープラン、3つのポイント

 

安藤 ライフシフトのマネープランについて教えてください。

 

内木場 100年ライフのマネープラン3つのポイントは以下です。

 

国や会社の社会保障制度を知っておく 

国の社会保険制度や自分とパートナーの会社の福利厚生を知っておくことでどんな時にどのくらいのお金がもらえるか知ることができます。将来どの程度自分で100年ライフに備えて資金を準備する必要があるか大まかにでも分かっておくことで、可能な働き方や資金の準備方法などの選択肢を考えることができます。

 

柔軟に働くためには共働きは最大の力になる

100年ライフでは働いたり、転職したり、キャリアアップを目指したり起業をしたり、「働く」選択肢がより広がります。その分、起業などリスクを伴う働き方を選択する時にはパートナーが安定的な働き方をするなどバランスが大事になります。それぞれのキャリアを尊重し働き方を変えながらも二人で働き続けることが100年ライフのマネープランを安定的にする強力な手段です。

 

寄付と投資で人、社会、企業とつながる

無形資産の形成には長い時間が必要だけれど同時にお金も必要です。賛同できる企業に投資をすることと同時に、地域や同じ思いを持ち活動する方々への寄付や投資をすることで国の支援や企業のCSRでは行き届かなかったところへお金を届けることができます。お金の「寄付と投資」そして活動による「時間」を長期的にかけることで地域・企業・人に時間とお金が循環し自分にも巡ってきます。そして無形資産と有形資産の両方を手にすることができると思います。

 

安藤 企業でも家でも、考え方は同じですね。

 

内木場 ファイナンシャル・プランナーの私は、年末になると来年に向けてお客様の投資プランについて一緒に考えます。同時に、我が家では一年間貯めた寄付用資金の使い道を家族で考えます。 

家族で話し合い、日頃から少しずつ貯めた寄付用資金を、社会的な活動をされている団体に寄付をします。家族で、社会問題と寄付について、また、時間とお金の使い方について一緒に考えます。投資も寄付と目的は近いものです。応援する先が社会問題解決なのか、企業なのかの違いです。 

将来のリターンはより良い社会という意味では同じだと言えます。企業からは配当というリターンがあると点は違いますが、クラウドファンディングが広がるなかで、投資と寄付はより近い存在になりました。

 

安藤 子どもと寄付について学ぶことはいいですね。

 

内木場 リターンにも色々ありますが、私は「ありがとう」という感謝がお金や時間と共に循環しながら、無形資産と有形資産が育てられると思っています。

 

聞き手:FJ代表 安藤哲也

取材・文:高祖常子(FJ理事、育児情報誌ninaruエグゼクティブアドバイザー)